フクフク丸のあずましいblog
あずましい=快適、すごしやすい  アナタの「心の元気」を引き出す   「漢方薬」に私はなりたい。
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2007/09/08 Sat  06:25:50» E d i t
 それからしばらくの間、噂は錯綜したが各人の日常の煩雑さの中にジジへの心配が溶けて消えるのにはそうは時間が掛からなかった。

 物足りなさを感じていた日々も慣れてしまえば「こんなもん」で、記憶だけを残して無情にも時間は過ぎ去って行く。日々の煩雑さにどっぷり浸ってその無情なる時間の中で私たちは生きて行くしかないのだ。

 ジジが来なくなってから、多分、みんなの中からある表情が減った。
 それがジジが毎日毎日、私たちのところに運んできていた荷物だったのだ。



 あれから数ヶ月、ジジの務めていた運送会社が営業を休止した。


 
 石油がこんな価格になってしまい、物流が盛んだった時代に隆盛を極めた多くの中小運送会社は過当競争の中で運賃引き上げの目処は立たず、昨今ではMADE IN CHINA の商品が日本国内の物流システムを大幅に変貌させ、さらに高速道路の整備によってかつては国道周辺にあった商圏ポイントが高速道路沿いに移行したために、かつてはドル箱運行路線と呼ばれた路線にズレが生じたりと色々と運送会社を取り巻く問題はあるのだ。

 
 ジジは、とうとうトラック運転手ではなくなってしまった。
 70歳を目の前にして再雇用の話もないだろうし。年金があれば、食うのには困らないだろうし・・・。

 
 だから、もう我が町の集配センターにひょっこりと顔を出してはタバコ吸いながらお茶を飲んで競馬新聞を開く事も、若い衆を呼びつけてはなぜかジョージアを手渡したり、けたたましく集荷の指図をすることもないのだ。

 
 
 黄金色の頭を垂れる稲穂の海を分ける一本道。
 私たちの車はジジの家に向かっていた。


 携帯電話も通じない、電話にも出ないからいい加減心配になって数人で連れ立ってジジの元を訪問しようとしたのは、私がジジにどれだけ世話になって今ここにいるかを実感しているからなのだ。

 ジジはいつでも私の成長を待ってくれていた。お互いに励まし、勇気づけ、共に笑い合いながら。ジジは私にとってかけがえのない「仲間」なのだ。年齢とか、通って来た道とかそういうのを全部ひっくるめた上で仕事上だけの付き合いを良い意味で逸脱してしまった「仲間」なのだ。

 
 ジジの自宅の前に到着し、呼び鈴を鳴らそうとしたまさにその瞬間、ジジがマルボロ片手に今にも壊れそうなロボットよろしく鼻と口から同時に煙を吐き出しながら玄関を開けた。夕刊でも取りに行くところだったのだろう。

 ステテコ、丸首Tシャツ、腹巻き。
 完璧なるジジスタイルでの登場に、いやでもこちらは笑顔になる。

 重い荷物を運び続けた小さな男の、肩の荷が下りたのだろうか。
 幾分、優しさと哀しさが同居したような表情を見せてジジは私たちを家の中へと招き入れた。


 ジジはこれからもジジであり続けるだろう。あり続けて欲しい。
 そう強く願った。


 日本という国が伸びて来た時代のカラッとした活気をこのジジたちは知っていて、ジジはその勢いを今の湿った時代にまで運んできた時を超えるトラック野郎なのだ。
 ジジが運んできた荷物は私たちが暗い顔をしていたら未来が閉ざされるということを暗に示していた。
 「明るい未来は、笑顔で拓いて行け」
 私たちは彼らが運んできてくれた荷物をどうやって荷解きして、どうやって自分達の荷物を組み立てて、次の世代に渡して行くのだろう。


 そんなことを考えながら、ジジが作ったタバコの煙の輪がふわりと歪んで霞んでゆく様子をぼんやりと眺めていた。

 ジジはその向こうでシワシワのいつもの泣き出しそうな笑顔で細く笑っていた。 
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